2010年3月アーカイブ

未知の用語について知りたい場合、現在であれば、ググる、これが最強の方法であることに間違いは無い。誤りがある可能性は常に示唆されながらも、Wikipediaは技術的な誤りを含む場面にはあまりであった記憶が無い。政治とか文化とか芸能とか、議論沸騰しそうなアイテムなら、偏った書き方と感じることはあるかもしれないが、こと技術に関する限り、記事の鮮度、詳細度、どれをとっても、既存のメディアはネットに太刀打ちできる状況にはない。

なのに、書籍としての用語集なのである。なぜ今、あえて『最新』の『パソコン』と『IT』の用語集を、商業ベースの書籍の形にする必要があるのか。

2010-'11年版 [最新] パソコン・IT用語事典 2010-'11年版 [最新] パソコン・IT用語事典

技術評論社 2010-03-03


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実物をパラパラめくってみて、あなはた気付くだろう。これは辞書として使うより、ある種の教科書、漏れを埋め誤解を正す啓蒙書として価値がある書籍なのだ。

Wikipediaには、パラパラ読む、みたいな機能は無い。本には、そういう『楽しみ方』がある。もっとも1300頁近い本書を最初からめくるのは気が滅入るだろう。だけど、例えば『俺はITのプロだ』と触れ込みで面接を受ける場合、それは入社やら資格の試験ということだが、用語を聞かれて答えられないっていうような残念な結果にはしたくない。だから、短期間で付け焼刃。それも効果があるかもしれない。もっとも、用語を聞くなんてのは、質問者のレベルが知れるってもので、そんな面接者しか出してこない会社や資格試験ってどうなのか、という疑問ももっともなことである。

あと、本書は、図表が綺麗で楽しい。知的娯楽として、今日は『と』で始まる言葉ね、という楽しみ方はあると考える。

辞書としての詳細度・網羅性等について、Google Chrome/AndroidやらWindows7の項目があって、新しい話題はフォローされているが、Hadoopのハの字も出てこない。クラウド関連は概してサラッと冷淡な扱い。本書のタイトルに間違いは無い。パソコン用語集と、IT全般用語集をマージした、いわばTの字型に溶接したような構成。これだけでITのことは何でも知ってますって顔で面接に望むと、例えばサーバ管理者側のことを聞かれて赤っ恥をかくことになるかもしれない。

「パソコントラブル」系の書籍というのも、ネット上でそれなりに情報を探すことができる今となっては、わざわざお金を出して買うインセンティブは低下している。断片的な情報を寄せ集めただけでなく、本としてプラスアルファの価値が必要だ。ノウハウ系の本なら、例えばその本を使って勉強をする気になる、というのも一つの訴求ポイントだ。

すぐわかる パソコン相談室 Windows7/ Vista 対応 すぐわかる パソコン相談室 Windows7/ Vista 対応
玉生 洋一

アスキー・メディアワークス 2010-01-20


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 この本はフルカラーで画面例が見やすく配慮されている。テーマごとに括ったQ&A形式、というのはオーソドックスで他書と大差無いのだが、「インターネットって何?」という禅問答を思わせる大風呂敷な質問から、PINGコマンドの利用方法まで、読者を理解度を徐々に高めてゆく「流れ」が形作られている。

断片的Q&A形式にして、独習書としても使える構成。飽きさせない誌面の作り、というところがポイントだ。

さらにTwitterまで解説の範囲を広くとり、パソコンそのものというより、ウェブサービスのほうをかなり重点的に解説している。ユーザのほうも、パソコンを使ってるという印象よりは、ブラウザを経由でネットの向こうの世界で活動している、というのが実感されているだろうWeb2.0+の時代だ。今後も、パソコン本体の解説にあてられるページ比率は低下の一途、ということで間違いない。

今、「インターネットって何?」から勉強しようという人は限られている。そういう層に向けて、この字の大きさも画面例の視認性の高さも、わかりやすさに直結していて、なるほど配慮が行き届いた書籍である。

画面例は高精細で字も大きく、読みやすい。記事も無駄が無く、その技術がどの程度高速化に貢献するか、適用の難易度、など、必要な情報が一目で得られるように工夫が行き届いている。XPを使い続けるなら、持っていて損はない。

WindowsXP究極の快適設定 2010 (TJ MOOK) WindowsXP究極の快適設定 2010 (TJ MOOK)

宝島社 2010-01-06


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昨年(2009年)前半、新しいパソコンを買うかWindows7まで待つか悩ましい時期があった。この間、とりあえず待つという選択をした方には、この本が紹介する高速化手法はとてもありがたかったと思う。で、Windows7が10月22日に発売された今となっては、この本の役割は終了しつつあると思っていたのだが、今年も改訂されて2010年版が出版されたのには正直驚いた。

昨年はシリーズ70万部実績をうたっていて今回80万部突破とあるから、一年で10万部を売ったことになる。では、昨年版をもっている人も買い換えろってことか。出版社も、そこまでは期待してないと思う。ただ、ムックという性質上、出版からごくごく短期間で商品寿命は終わってしまうのだ。半年以上たって売れ残っていれば、書店では不良在庫のように扱われ、よくて隅へと追いやられ、そうでなければ返品となる。

が、今でもXPを使っている人は圧倒的に多いわけで、使えば使うほど確実に重くなっていくXPの特性を考えれば、このムックの潜在需要は今でも確実に存在するのだ。

というわけで、去年から今年にかけてXPに関して大きな発見がなされたわけでも新サービスパックのような大変化があったわけでもないが、XPを使い続けるという選択をしている限り、このシリーズはオススメです。最新版に買い換える、というまでのことはないにせよ。

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