パソコンの引越しは、予算が許すのなら業者に頼んでしまったほうがいい作業だと思う。まず、ルーチンワークだ。時間ばかりかかる。自分ではやりたくない。そうは言っても自分は間違いなく業者の側にいるから、ある種のセールストークと解されてもいたしかたない。
だけど、パソコンのこの手の作業をまずは自分でやってみると決めているお客様は少なくない。そういう高いリテラシーをお持ちの方で、しかし少々不安もあるという場合、こういう懇切丁寧な本が一冊あると、もう、怖いもの無しだろう。画面例の視認性も高く、ガイドブックとしてとてもよく出来ている。
が、手放しでお勧めできないのは、なぜか。
はじめての安全なパソコンのお引っ越し Vista→Windows7 (BASIC MASTER SERIES) 村松 茂 秀和システム 2009-11 |
VistaからWindows7というと、同じマシンでのアップグレード、インプレースアップグレードをまずイメージするが、本書ではむしろ、目の前に新機と旧機の2台が並んでいる状況が想定されている。※ 前者は正確にはお引っ越しではない。インプレースアップグレードでは途中でトラブル発生も想定してデータを完全にバックアップして実行という、緊張感伴う作業となりがち。対するに、目の前に2台制的に存在する状況は、限りなく牧歌的。今日はここ、明日はあちら、ステップバイステップでOK。ミスしても、またもう一度正しく繰り返せばいいだけ。趣味とか道楽のひとつとして、じっくり楽しむ、というのも悪くないかもしれない。
さて、ユーザ層の数という意味では、Vista→Windows7よりもXP→Windows7のほうが、圧倒的に和は多いだろう。同じ著者さんがXP→Windows7のほうも書かれている。Amazonで今見たら、やはり売上げ順位はXPからのほうがずっと上位だった。評判のよいWindows7もひと皮剥けば要するにVista Plusみたいなもんだから、まだまださすがにVista機を捨ててというまでの判断をされる方は少数ということだろう。
本当に全部のファイルが移行されたのか、他書であれば、フリーソフトのフォルダ比較ソフトを導入するところだが、本書では画面を並べて目視検査。このほうが初心者には敷居が低くて安心ではあるのだろうけど、はて。
なお、本書では、ありとあらゆるウイルス対策ソフトの紹介が行われ、iTunesやWindowsMediaPlayerで買った音楽の扱いにまで言及する。そうこうして、膨大な時間をかけてきたパソコンのお引っ越しも終りに近づき、本書も大団円を迎える最後の最後になって、「第13章:すべておかませの手軽な引越し方法」が紹介されるのである。
はあ?
そんな簡単な方法があんなら最初に言ってくれよ!!!!!
って、あなたは怒るかもしれないが、後の祭り。
切れまくってしまったあなたは、巻末おまけの『ハードディスク完全消去』の項に従い、Vista機を中古ショップに叩き売るのであった、というオチになるのかもしれない。
コメントする