湘南地域では、ケーブルTV事業者のJCOM様が回線を提供され、au Wi-Fi Spotが普及しつつある。今回の記事は、その設置を引き受けられる、カフェなどのオーナー様に関する考察。とあるお客様から相談を受けたことで考えたことをまとめますl。
 
駅前の商店街、とある店舗のオーナー様から、「こんなの配りに来たよ」と見せられたのが、WiMAXと、カスタマイズされたバッファローの無線ルーターの組み合わせ。いわゆるWi-Fiスポットを量産するためのキットのようなもの。店舗のお客様のデバイスとはWi-Fiで接続し、信号はWiMAX経由でインターネットに繋ぐ、そういう仕組み。(こちらはauさんのものではありませんでしたが) 店舗のオーナーさんにとっては、無料。携帯電話会社さんにとっては、いわゆるWi-Fiオフロードとなって、トラフィックの激増を緩和できるメリットがある。だけど、WiMAX経由となると、いわゆるLTEのレベルの性能は出ないでしょう。ここにボトルネックがある。
 
この今までWiMAXだった部分にケーブルTVの固定線を使うというのなら、確かに性能の問題は解決しやすい。さきほどのバッファローの無線ルーターであれば、有線LANの差し込み口が余っているから、そこに繋げばオーナーさんは無料でインターネット接続が利用できるに違いない、そういう下世話なアイデアが浮かんできても不思議はない。
 
で、auさんのコールセンターに質問してみたら、そういうオーナーさん向けのメリットは無い、ということだそうだ。オーナーさんもご利用にはau IDが必要になる。auのスマートフォン契約をお持ちなら、パソコン1台を付加して接続して使える。JCOMの担当さんにうかがったところでは、そういう使い方をされているオーナーさんもおいでだそうだ。ただ、大きい会社や事務所では、そういう使い方をしているところは聞いたことがないそうだ。
 
もし、オフィスにパソコンが一台だけ。ならば今まで契約していたブロードバンドは解約して、オーナーさんも店舗のお客様と同じく、au Wi-Fi Spotのエンドユーザとなるのが経済的ですな。
 
だけどもし、複数のパソコンを使ってて、プリンタとかファイルとか共有する資源があるのなら、話は違う。au IDが無くても、wi2ネットワークと契約して月380円でau Wi-Fi Spotが使えるとしても、ちょっと待った。時代がクラウド全盛だとしても、だ。オフィスのコンピュータ資産を公衆ネットワークに乗せてしまうのは、まだちょっと不安というその心理は理解できる。そういう場合は、うちの事務所はどんどん大きくする、そう考える。大きくするならオフィスの回線と公衆サービスの回線を一緒にするなんて、まず考えないでしょ。
 
かくて、もともとJCOMの契約をお持ちのオーナー様の事務所には、2回線分の機器が並ぶことになる。※どこか違ってたら教えて下さい。
 
こう考えてくると、JCOMユーザの店舗様は、JCOM経由のau Wi-Fi Spotのオーナー様となることで、ある確率で既存のJCOM契約をキャンセルすることになって、利益相反にならないのか、と。だけど、その比率は高くないと思うし、おそらくキャンセルされる回線はむしろFletsとかの方も少なくなくて、JCOM様としては、Fletsのユーザ層を蚕食しつつ、請求はまとめてau様にできるという、スケールメリットばっちりのご商売がさらに繁盛される絵図になっているのではないかと考えます。いや、ご同慶の至りでございます。

暗黙知という、野中先生が世界に広めたアカデミックな言葉をここで使うのがふさわしいかは、置いておきましょう。

パソコンサポートを俗世間での俗っぽい商売として素直にとらえた場合、接客業としての側面、そして、技術サービス業の側面、この2つの大きな要素からなること、これは実感として確かなものがあります。技術だけじゃ全然駄目、ということです。

その技術方の半分、技術サービス業としての中身を考えると、技術者としての知識を演繹的に使うような面は当然として、一方で、お客様へのアドバイスというか、不調の原因はこれこれだから、これからはこのようにお使い下さい、って提案するようなところ、要するに情報提供業の側面があって、ここが重要なのだと思います。

思いやりに類するもの、付加価値はこの情報提供の部分に宿るのではないでしょうか。

そうはいうものの、トラブルシュートはやはり、機械相手のオタクでマニアックなテクノロジの世界であって、その世界が十分に広くて深くて、到底すべての知識と情報を事前に身に着けておくことなどできない。となると、現場でのアドリブ力が要求されることになる。

情報は、ググればなんとかなる。あとは応用力。

ということで、知らないことは知らないと正直に言わざるを得ないとしても、知らなくても問題は解決できるわけで、終わりよければすべてよし。解決できれば誰も文句は言わない。要求されるのは、広くて浅い常識と、あとは突破力、これは根性と呼ばれることもあるし、あるいは人間力とでも呼ぶものかもしれない。

だから、パソコンサポートを支える暗黙知、のようなものは、パソコン修理のようなバックエンドにおける暗黙知とは異なるのでしょう。ヒューマンスキルに片足つっこんだような、そんな暗黙知。これをそれなりに白日の下に引っ張り出して衆目に曝すことができれば、それはそれでそれなりに価値があるものになるのではないか。

というわけで、パソコンサポート屋がパソコンサポートのノウハウを語ってしまうのは、なんだか自滅へ向かう馬鹿げた行為に見えなくも無いが、おそらくそんなに簡単に詳らかにはできなくて、そこに暗黙知が確実に存在すること、これが示せればまあいいとしましょう。

そこにもここにもダークマター、だけど見えない、検知できない。ああいう世界みたいな感じでしょうか。