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オライリーといえば格調高いコンピュータ専門書の翻訳書が知られているが、そこに日本の著者による魅力的な一冊が加わったことは、同じ日本人として誇らしいことです。

この本は、かなり敷居が高い。日頃パソコンを使う一般ユーザはもとより、現場で手足を動かすサポート技術者がここまで知っている必要があるかといえば、そうでもない。だが、極めて興味深い内容がそこにはある。

医療で喩えるなら、病理の臨床研究の解説書。患者さんは知る必要もないし、興味も無いだろう。街のお医者さんは、その成果をノウハウとして活用する。研究の手法については、あるいはまったく知らなくてもいいかもしれない。そこらへんに精通していることは意味がないわけではないが、付加価値は患者さんとの接し方、直接の治療とは別のメンタルな相談相手としての、癒し、こちらに重心は置かれるだろう。

コンピュータ書だが、実用書ではない。

だとすれば、一般ユーザ様向けの書評コーナーになぜ敢えて掲載するのか。それは、面白いから、その一言に尽きる。これが、ノウハウ書、どういうツールを使ってワンクリックを駆除するか、そんな話なら、紹介しなくてもいいかもしれない。が、この本は、言ってみれば先端技術を垣間見せてくれる著作であり、十分理解できなくとも理解できないなりに、そこで行われているのがどういうプロセスなのか、ということが伝わってくるのである。これ、ダークマターとか超ひも理論とか、ちんぷんかんにもかかわらず血湧き肉踊る宇宙論やら素粒子論等ハードサイエンスの高揚感に通じるところがある。

オライリーなのに薄い、けど、オライリーだけに高い。

ウイルスとかスパイウエアとか、マルウエアを駆除するのが仕事の一部となっている諸兄、そして、どういう仕組みで感染が起こるのかに興味のあるマニアの方に、お勧めします。

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