このパソコン書評欄は、MTOS5 (Movable Type Open Source 5) で作成している。
MTOS5はMT5 (Movable Type 5) と「同一人物」ではないが「そっくりさん」と言って間違いない。機能的には、カスタムフィールドという、データベースフィールドを利用者が任意に追加できるという機能が、MTOS5では削られている、というぐらいの違いしかない。
MTOSは無料で、商用利用可能であるのに対し、MT5はライセンスが6万円超からという、小規模企業が使ってみるには少々敷居が高いことは間違いない。が、ウェブサイトが規模的に成長して数百頁に至るあたりで、十分に行き届いた管理が手作業では極めて困難になるとされる。だから、いずれにしても、何らかのCMS (Contents Management System) の導入は念頭において現代のウェブサイトは作られることになる。無料にして高機能のMTOS5はそのCMSとしての利用が期待されていることで間違いない。
ところがこのMTOS5、まだこの1月にメジャーアップグレードされたばかりということもあって、書籍の蓄積が乏しい。だからこそ、下記に紹介するような本格的な解説書が出版されると、まずは飛びつくのが人情なのである。
Movable Type 5実践テクニック ソフトバンククリエイティブ 2010-03-26 著者:蒲生トシヒロ,他 / シックス・アパート株式会社 Amazonで詳しく見る |
しかし、世の中はそれほど甘くないのである。
本書にて、自由自在にカスタマイズされたウェブサイト例を見て、わくわくしながらそのサンプルコードをダウンロードし、MTOS5のサイトにインストールした私は、言葉を失った。サイトが破損したのだ。具体的には、デザインを修正しようと「テーマ」というサブメニュー項目をクリックすると、MTOS5はエラーを起こして、それ以上進まない。
原因は、サンプルコードが徹底的にカスタムフィールドを使ったものであり、このカスタムフィールドに対応する部分でことごとくエラーを起こすのである。MTOS5には復元とかアンインストールのような機能が見当たらず、泣く泣く一度MTOS5をアンインストールし、データベースをまっさらにするかと考えたが、とりあえず、MTOS5内の「theme」フォルダに追加されたサブフォルダをどけてみると、なんとかもとどおり使えるようになった。
ということで、MT5のライセンス販売とサポート料金を収入源としているシックスアパート社が作成した本で、MTOS5の使用ををあからさまに勧めるような内容となるわけがないわなと、後から考えればわかるわけだが、それにしても、MTOS5で使うとヤバいよと警告はあってもよかったのではないか。
さらにいえば、この本を熟読したからといって、「テーマ」を自分で作れるようになるわけではない。著者さんから与えられたゴージャスなサンプルをカスタマイズできるようになるだけだ。MT5は何ができるか、この本が教えてくれるので、具体的にどのようにその機能を実現するのかは、他の書籍に譲るか、あるいはMT5のカスタマイズ業者に頼めよ、ということになる。
ということで、この本はMT5のショールーム的存在ではあっても、MT5を自由自在にカスタマイズして使いこなすスキルを紹介するものではない。そこらへん、理解した上で読み始めないと、がっかりしましたとか、時間を無駄にしましたとか、そういう残念な結果となる。
が、MT5のライセンスを買う資金程度は節約する必要もなく、カスタマイズ業者に発注する費用をケチるよりは、Coool!で操作性(特に保守性)に優れたサイトを外注予算をばっちり使って作るほうが目的にかなっているユーザ層には、本書は画期的な必読書といえる。(MTOS5のユーザは、読まなくていい、かもしれない。)