未知の用語について知りたい場合、現在であれば、ググる、これが最強の方法であることに間違いは無い。誤りがある可能性は常に示唆されながらも、Wikipediaは技術的な誤りを含む場面にはあまりであった記憶が無い。政治とか文化とか芸能とか、議論沸騰しそうなアイテムなら、偏った書き方と感じることはあるかもしれないが、こと技術に関する限り、記事の鮮度、詳細度、どれをとっても、既存のメディアはネットに太刀打ちできる状況にはない。
なのに、書籍としての用語集なのである。なぜ今、あえて『最新』の『パソコン』と『IT』の用語集を、商業ベースの書籍の形にする必要があるのか。
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実物をパラパラめくってみて、あなはた気付くだろう。これは辞書として使うより、ある種の教科書、漏れを埋め誤解を正す啓蒙書として価値がある書籍なのだ。
Wikipediaには、パラパラ読む、みたいな機能は無い。本には、そういう『楽しみ方』がある。もっとも1300頁近い本書を最初からめくるのは気が滅入るだろう。だけど、例えば『俺はITのプロだ』と触れ込みで面接を受ける場合、それは入社やら資格の試験ということだが、用語を聞かれて答えられないっていうような残念な結果にはしたくない。だから、短期間で付け焼刃。それも効果があるかもしれない。もっとも、用語を聞くなんてのは、質問者のレベルが知れるってもので、そんな面接者しか出してこない会社や資格試験ってどうなのか、という疑問ももっともなことである。
あと、本書は、図表が綺麗で楽しい。知的娯楽として、今日は『と』で始まる言葉ね、という楽しみ方はあると考える。
辞書としての詳細度・網羅性等について、Google Chrome/AndroidやらWindows7の項目があって、新しい話題はフォローされているが、Hadoopのハの字も出てこない。クラウド関連は概してサラッと冷淡な扱い。本書のタイトルに間違いは無い。パソコン用語集と、IT全般用語集をマージした、いわばTの字型に溶接したような構成。これだけでITのことは何でも知ってますって顔で面接に望むと、例えばサーバ管理者側のことを聞かれて赤っ恥をかくことになるかもしれない。